〈和風建築〉のすすめ

小見山 健次 Kenji Komiyama

今、「和風」が人気

今「和風」が人気です。
もちろんこの人気は建築に限らないし、「和風」といっても表現の上では多種多様。建築だって必ずしも塗り壁に和瓦の載った家が人気という意味ではありません。「和の設え(しつらえ)が好き」という言葉の向うには当然日本人の文化的な体質が大きく関わっています。厳しい時代だからこそ「癒し」の場としての「和風」が求められているとも言えます。シックハウス対策から自然素材が求められているということもあるでしょう。

「間(ま)」の空間

「和風」建築をずばり言うなら“日本特有の「間(ま)」の概念がつくる空間”ということになります。「間」とは言ってみれば曖昧さ、ファジーな感覚のことです。「間合い」という意味では「呼吸」、あるいは「バランス感覚」と言ってもいいでしょう。白とも黒ともつかない中間領域を好む感覚から「グレーの文化」などとも言われています。
これを建築的に解釈すれば、光を適度に透かす「障子」が演出するほの暗さ、気配。深い軒下につくる縁側のような内とも外ともとれる空間、土や木、紙、布などの素材感を「趣き」として楽しむそれでもあります。自然と人工とが接する辺りを気持ちのいい関係と見る心です。苔むしたり朽ちたりしていく過程を美しいと尊ぶ感覚自体が「和風」感覚なのです。

新建材住宅

ところでそんな繊細な感覚を持つ日本人の住まいはというと、昨今どこを見てもタイル模様などのボードを貼り付けた「新建材住宅」がひしめくばかり。とてもそんな光景には「趣き」などと、その佇まいや気配を大切にする思いは感じられません。ある著名な建築家がそうした住宅の光景を「ショートケーキのような…」と評しましたが、思わず納得させられます。北陸を旅すると日本海の海辺に面して黒い瓦が載った家並みが続く美しい集落を目にします。潮風に負けないように鉛を混ぜて焼いた粘土瓦が黒い郷土色を演出している光景です。似たような景観はあちこちにまだまだ残っているし、美しい景観をと叫ぶまちづくりの呼び声には誰もがそうした風景を夢見ているのも確かです。ところが前述のような「新建材住宅」がひしめく団地の風景には「集落」という言葉はまるで似つかわしくありません。美しさの尺度など持ち込みようもないのです。

“安普請住宅”がつくる景観

でもそれが今の日本の大方の都市景観の現実なのです。否定しようもないほどに歴然とした現実の風景なのです。「和風」好きの日本人の住まいがどうしたことだ…。厳しいコストが求められる中での作り手側の創意工夫は大いに結構なことですが「安価な家」づくりが趣き(おもむき)など無縁の「安普請住宅」にしかなっていないという現実がこうした景観をつくり出しているのです。断熱性能や気密性能など数字で表せることは強調されても、その建築がつくり出す景観や気配についての認識が欠如しています。

心和む「和風」建築を

住まい手は「癒しの場づくり」を望んでいたのではなかったでしょうか。それに応えるはずの作り手は何をつくろうとしてきたのでしょうか。せっかくの「和風」人気です。この際だからデザインの責任の所在を明確にして、各々が身を正すべきです。心和む「和風」建築をつくりましょう。

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