EMERAUDE ARCHITECTURAL LABORATORY CO,LTD. 
 

普通教室/内観CG図

南面/軸組時


概要
●「コミュニティ(交流)」と「アクティビィティ(活動)」の場に
「廊下」を単なる移動空間ではなく、目的の場所に向かうまでの間に様々なデキゴトが生じる可能性のある空間に変えることで、子供たちの心がそれぞれに〈居心地の良さ〉や〈楽しさ〉に出会える可能性を生み出す場としています。

●管理エリアの位置づけ
「廊下」を介して構成された「中庭」としてのコミュニティスペースは、1学年から3学年までの各学年の全教室で囲んで生まれた「交流広場」であり、学年を超えた、子供たち全員と職員とが文字通り一体共用することで様々な〈交流〉の可能性が生まれる場となっています。
敷地の広さを生かすことで建物を平屋建てとし、管理部門と普通教室群、校庭と特別教室群とのそれぞれの関わりに、より直接的な関係性を重視しました。職員室と普通教室とを最も身近な位置づけとしています。

●「ハーモニカ型教室」
「特別教室型」、いわゆる在来の「ハーモニカ型教室」の 長所は、全ての教室が南面していますから南の陽は均一に 入ります。南北に抜ける通風も良好です。 しかし、この配置では子供たちはホー ムルームとしての「教室」と特別教室との間を「廊下」を つたって往復するだけですから、廊下の移動の中では何も 起こりません。何も生まれません。 子供たちの校内での行動は、教室での授業と教室内での休 み時間の過ごし方しかありません。行為のきっかけとなる 場があまりにも少なすぎるのがこれまでの特別教室型空間 の欠点でした。
この中学校では子供たちの生活の場に多様なコミュニティ空間を確保すべく、広場を囲む教室配置としています。 廊下にテラス機能を付加することで、廊下は単なる通路にとどまらない多様な機能空間としての 個性を備えます。特別教室型でありながら教科教室型の特徴を合わせ持つ新しい中学校建築を実現しているのです。

校舎全景/鳥瞰CG図


張弦梁構造の架構

張弦梁構造/構造見学会

●<自発的な学習>を啓発する多様なコミュニティ空間

総事業面積約4,300㎡に及ぶ大規模木構造による中学校建築です。
自然環境を優しくコントロールするべく、4つの広場空間を囲むように配置された教室群は冬の北風を遮り、夏の緑風を呼び込みます。平屋で構成されるこの教室の連なりは、地場の職人によって容易に施工が可能となるよう、大断面の集成材を用いることなく、全て中小断面の構造部材の接合により加工されるなど、構造材によるローコスト化と地場職人育成にも配慮しています。

●「シザースアーチ」方式の張弦梁構造
教室の8mにも及ぶ大空間を支える梁材は「張弦梁」と呼ばれる弓形部材で「シザースアーチ」方式の特殊な形状をしています。この梁材はスパンとライズと束(つか)の数が決まると一義的に形状が決まるという性質を持ち、基本的に交差する下弦材1本の長さや交点位置は主材・側材のどれも同じ材寸となるだけでなく、すべての部材加工の角度や寸法が同じとなり、主材と側材の荷重角度が等しく、引張力が効率よく伝達されるという特徴を備えています。
こうした構造は木構造の権威・東京大学の稲山正弘教授の協力を仰ぎ、大断面構造ではなく中小断面をもつ集成材で構成されたトラスで大空間を支えています。この手法は接合部に複雑な金物を一切使わず、伝統的な仕口継手としているために、施工においても地元工務店の優秀な大工技術を駆逐する結果となり、文字通り地域に根ざした新しい木構造建築を実現しています。

■第1期工事/2013年3月末完成予定 (4月部分開校予定)
■第2期工事/ 2014年3月末完成予定 (4月全工区開校予定)

教室と廊下の軸組

張弦梁の組立

教室の照度測定

張弦梁の製作検査

軒の氷柱/冬-4度

正面玄関/後方は2期工事解体予定校舎